外壁タイルの浮き・剥がれは通行の安全を優先する

「会社の入口にタイルが落ちていた。まず何をすればいい?」
「一枚だけ貼り直せば、通行を再開してよい?」
外壁タイルの落下に気づくと、営業を続けてよいのか、修理をどう手配すればよいのか気になるのではないでしょうか。
タイルが落ちたときは、さらに落ちるおそれがある場所に人を近づけず、建物の管理者へ連絡します。専門家による調査も手配しましょう。
この記事では工場・店舗・事務所の担当者に向けて、落下後にすることや調査方法の違い、修理の提案で確かめることを説明します。
危険がある間は近づかず、管理者や調査担当者へ状況を共有する際にお使いください。
目次
落下の危険がある場所へ人を近づけない

落ちたタイルを片付ける前に、人が通る場所の安全を確かめます。人を近づけないようにし、管理者へ連絡しましょう。記録は安全な場所から残し、次の3点を確認しましょう。
落下のおそれがある通行範囲を制限する
さらに落ちる可能性を考え、タイルが落ちた場所の下や周辺へ人を入れないようにします。破片の位置だけを囲って安全と判断しないでください。入口や通路に面している場合は、次のように対応します。
立入範囲や通行再開の時期は、専門家の確認を踏まえて管理者が判断します。
道路側にも落下のおそれがある場合は、管理者が道路管理者等へ連絡します。施設内の判断だけで通行を誘導しないでください。
出典:国土交通省関東地方整備局|かんとう保全ニュース令和5年夏号、1〜2ページ「落下物が発生した場合の措置」
管理者へ落ちた場所と今の様子を知らせる
管理者には、タイルが落ちた場所と時間、人や車への影響、今通れなくしている通路を伝えます。建物を借りている会社は所有者や管理会社にも連絡してください。
「駐車場側の入口の上」など利用場所と結び付けて伝え、社内にも通行制限を共有します。前の報告書があれば渡しますが、資料探しで連絡を遅らせないでください。
写真は安全な場所から残す
写真は離れた安全な場所から、壁と落下位置の関係を残します。撮影のために壁の下へ入らず、次の作業は自分で行わないでください。
「浮き」はタイルと下地などの間が離れた状態で、見た目だけでは分かりません。近接撮影や破片の調査は、安全措置を準備した専門担当へ任せましょう。
調査方法ごとに分かることを確認する

目で見る調査・打診・赤外線調査では、調べる内容や実施できる条件が違います。方法名だけでなく、調査範囲と条件を次の三点で確認します。
目で見る調査・打診・赤外線調査を分ける
調査結果は、どの方法で何を確かめたのかを分けて読んでください。通常の写真を撮ったことと、浮きを調べたことは同じではありません。調査方法ごとに、次の内容を確認します。
| 方法 | 役割と確認する条件 |
|---|---|
| 目視 | 割れ・欠け・膨らみ等の外観を確認。裏側の浮きを見た目だけで確定しない |
| 打診 | 専門家が打撃音から浮き等を調査。接近できる場所と実施範囲を確認 |
| 赤外線 | 表面の温度分布から浮きを判定。気象・材料・撮影条件と打診との照合を確認 |
写真の枚数より、何を調べた画像かを確かめます。「目視で異常が見えない」と「調査範囲で浮きがない」は別の結果です。
赤外線調査の条件と未確認部を確かめる
赤外線調査は日射や天候、タイルの種類、撮影角度等を踏まえて計画します。一度撮影すれば、すべての浮きが分かるわけではありません。
赤外線と打診の結果を照らし合わせ、検出が難しい面は条件を変えるか打診で調べます。庇の裏や隣の建物に隠れる面など、未確認の場所も図で分けてもらいましょう。
出典:国土交通省掲載|定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)による外壁調査 ガイドライン、3.2〜3.4
壁へ近づく方法と範囲を確かめる
高所や入り組んだ面は、安全に近づく方法も調査計画に含めます。足場や作業車を省く案では、次の範囲と目的を確認しましょう。
地上から見えなかった場所を、説明なく「異常なし」としていないか確認できます。
修理する範囲を調査図と見比べる

修理の提案は、調べた範囲・見つかった傷み・直す範囲を、同じ図で見比べましょう。次の3点で、場所と下地、完了後の確認を整理しましょう。
落下位置と周辺の調査結果を記録でつなぐ
タイルが落ちた場所に番号を付け、周辺の浮きや割れと、修理する場所を見比べます。一枚落ちたことだけで補修数量を決めないためです。確認する点は、次のとおりです。
| 項目 | 書いてもらう内容 |
|---|---|
| 位置 | 壁面・階・写真番号と落下箇所 |
| 調査 | 方法ごとの実施範囲と未実施部分 |
| 所見 | 浮き・割れ等の場所と判定の根拠 |
| 補修 | 対象位置・数量と変更時の確認手順 |
| 再開 | 立入制限の解除を判断する人と確認内容 |
落ちた一枚だけを直す案と、周辺の浮きも直す案では範囲が違います。未調査の場所は、予算にかかわらず追加調査の要否を聞きましょう。
タイルの裏側の補修を確認する
タイルを残すか張り替えるかは、どこが剥がれているか、下地はどんな状態かを調べて選びます。表面をきれいにしただけでは裏側の状態を確認したことになりません。
タイル下のモルタルやコンクリートも傷んでいれば、補修範囲を確認します。樹脂やピンの本数を自分で指定せず、その工法を選んだ理由を施工者へ聞きましょう。
出典:国土交通省|公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版、4.4.1〜4.4.4。官庁施設向けの既存モルタル張りタイル壁の仕様を、工法の区分の参考としています。
完了確認と未調査部を引き継ぐ
補修箇所と確認結果、未調査の場所と次の対応を引き継ぎます。見た目だけで通行の安全を決めず、次の点を管理者と共有しましょう。
補修完了と全周の調査完了は別です。未調査の面と理由を残し、次の調査をいつ相談するかも決めておきましょう。
対象は屋根ですが、写真の位置と調査方法を対応させる読み方は外壁の報告書にも使えます。写真と未確認箇所の確認方法は、点検報告書を読む記事で詳しく解説しています。
外壁タイルの浮きと剥がれのよくある質問
外壁タイルの浮きと剥がれについて、よくある質問にお答えします。
- Q. 一枚落ちただけなら一枚直せばよいですか?
A. 周辺の状態を調べて補修範囲を決めます。落ちた一枚の周りに浮きが残っているかは、見た目だけでは分かりません。
貼り直しを急ぐ前に、管理者と安全措置を確保して調査を手配してください。
- Q. ドローンで撮れば浮きも全て分かりますか?
A. 通常の撮影だけで浮きを全て確認することはできません。赤外線カメラを使う場合も、適用条件と打診との照合が必要です。
撮影した壁面の一覧に加え、調査できなかった場所と代替方法を説明してもらいましょう。
- Q. 表面を塗ればタイルの落下を防げますか?
A. 一般的な塗り替えを、タイルの固定や落下防止の確認に代えることはできません。専用の落下防止工法を提案された場合は、対象の下地・補修範囲・性能の根拠を確かめます。
表面を覆う見た目だけで同じ工法とせず、定期調査での扱いも調査担当者に確認してください。
- Q. 会社の建物は全て10年ごとの全面打診が義務ですか?
A. 全建物に同じ義務があるわけではありません。定期報告の対象や外壁の仕上げを確認します。対象の建物で乾式工法を除くタイル・石貼り・モルタル等を使う場合、落下すると歩行者等へ危害を加えるおそれがある部分がおおむね10年ごとの全面打診等の対象です。
打診と同等以上の精度を持つ赤外線調査も認められています。代替調査や落下防止措置付きタイルの扱いは、工法・性能・施工記録等の条件で異なります。自己判断で省略せず、調査員に適用根拠を確認してください。
- Q. 山梨県内の定期報告はどこで確認できますか?
A. 県の定期報告制度のページで対象一覧と窓口を確認できます。甲府市内の建物は甲府市の窓口へ問い合わせる案内です。
用途や規模等で対象を確かめ、必要な調査時期を担当資格者と相談してください。落下が起きたときの対応は、定期報告の時期を待たずに行います。
安全の確保と調査を先に手配しましょう

外壁タイルの落下では、通行を制限して管理者へ連絡し、周辺を含む調査につなげます。
相談時には次の三点を共有してください。
資料をそろえるために、危険な場所へ入る必要はありません。安全を確保したうえで調査図と補修提案を読み合わせ、対応が残る場所も管理者へ引き継ぎましょう。
タイルの販売や工事に関わる会社として、株式会社シンケン 甲府支店を紹介しています。
出典
- 国土交通省関東地方整備局|かんとう保全ニュース令和5年夏号
- 国土交通省掲載|定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)による外壁調査 ガイドライン(令和4年3月)
- 国土交通省|公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版、第4章
- 国土交通省|定期報告制度における外壁のタイル等の調査について
- 国土交通省中国地方整備局|外壁仕上げ材の10年点検(2024年5月)
- 国土交通省|有機系接着剤を用いた外壁タイル張りの調査方法について
- 国土交通省|落下防止措置付き外壁タイルの取扱い(令和7年6月30日改正)
- 国土交通省|落下防止措置付き外壁タイルの性能検証方法(令和8年7月21日)
- 山梨県|定期報告制度について
執筆・編集:ナカゴミ建設 WEB広報